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隠し部屋
世界昔話
「盗賊と犬」
昔々、それはもう遠い昔、一人の盗賊がいました。
盗賊は一匹狼で、道行く人々から金品を奪い、生活していました。
ある日のこと、
盗賊が巻き上げた金で食料を調達に行こうとすると、一匹の大きな犬に遭遇しました。
「汚ぇ犬・・・」
体の大きな犬は酷く弱っており、病気なのかところどころ毛が抜けていました。
犬は助けを求めるような瞳で盗賊を見ましたが、盗賊は知らぬふりです。
「お前なんかにかまってる暇は無い。悪いな」
暇なくせに嘘をついてさっさと食料を調達しに行きました。
街についた盗賊は必要なものを買いあさり、そのまま森の自宅へと帰ろうとしました。
そんなときです。
「ちょいとアンタ」
呼び止められ振り向くと、笑顔の商人が立っていました。
「ペット飼ってるかい?」
「いや・・別に・・・」
「そうか。ならこれを買いなされ」
「いや、いらないってば」
「いいから。これ前から欲しがってたじゃん」
「欲しくない・・・」
懐に余裕があった盗賊は犬グッズを買わされました。
付きまとわれるのが嫌だったので買ったようですが。
「変なものを買ってしまった・・・あのボケ商人のせいで・・・」
えらい愚痴をこぼすコソドロ盗賊。
しかしふと頭に犬のことが浮かびました。
「どうせ死ぬんだろうな・・・死ぬ前に一度ぐらい良い思いさせてやるか・・・」
「ほらよ」
骨の多い肉におかしな形の玩具。
盗賊は犬の前に投げ捨てました。
「ありがたく思え。犬っころ」
ハグハグ・・・
犬はよろよろと立ち上がり、肉を食べ始めました。
「・・・・」
なにを思ったのか、盗賊は買ってきたミルクを分け与えました。
ピチャピチャ・・・
弱々しい、けれど犬は懸命に飲み、食らっていました。
「クソ犬が・・・」
盗賊は笑顔でした。
盗賊は生まれて初めて善い行いをしました。
あくる日、盗賊が犬のいた場所へ行ってみると、犬は死んでいました。
「・・・」
盗賊は悲しくなりました。犬を失ったことよりも、恩を仇で返されたような気がしたからです。
初めてした善行は意味が無かった。盗賊はそう思ったのです。
「何もしないほうが良かったんだ・・・」
空しい気持ちになる盗賊。
その様子をじっと見つめる男がいました。
「無駄ではない」
「・・・誰だ?」
男が語りかけます。
「無駄ではない。犬の顔を見るが良い」
「・・・・・・」
犬は心なしか満足げでした。
ふと脇を見ると、かじった後のある例の玩具が落ちていました。
「その玩具で犬は遊ぼうとしていたのじゃよ。せっかくお前さんから貰ったものじゃからの」
「・・・そうか」
「無駄ではない。お前さんがしたことは無駄ではない」
「・・・・アンタは・・」
ふと顔を見ると、それは昨日の商人でした。
「アンタだったのか・・・」
「ずぅっと後をつけていたのに気付かんとはの」
「ってことは犬のことも知ってたのか・・」
「当然じゃ」
「じゃあお前が看病してやれば良かったんじゃん」
おしまい
−選択肢−